こんにちは、医学部専門予備校の医進会です。
現役で私立医学部に進むか、1浪して国公立医学部を目指すか。これは、学費だけでなく、合格可能性や浪人にかかる費用、本人の状況まで含めて考えたい大きな選択です。
学費だけを比べれば、1浪して国公立医学部に合格する方が、進学する私立大学によっては1,000万円以上、場合によっては数千万円の差が生まれます。ただし、1浪して国公立に合格する保証はありません。現役で私立医学部に正規合格しており、学費を現実的に支払えるのであれば、現役で進学する方が合理的なケースも多くあります。
- 国立医学部の学費は6年間で約350万円、私立医学部は約1,850万円〜4,600万円台
- 1浪の費用は予備校代・生活費・受験費用に加え、医師になるのが1年遅れることも考える
- 医進会では、国公立合格の見込みが60〜70%以上ある場合に、1浪を前向きに検討することをすすめています
この記事では、現役で私立医学部に進む場合と、1浪して国公立医学部を目指す場合を、学費・浪人コスト・合格可能性から比較します。
この記事を書いた人
稲岡拓実(医進会 塾長)。現役時は共通テスト70%・模試は全E判定。1浪で共通テストを89%まで上げ、浜松医科大学医学部に合格。現在は医学部受験生の学習管理と受験戦略の指導を行っています。
国公立と私立の学費差は、最大で4,000万円を超える

国立大学の授業料・入学料の標準額は、入学金28万2,000円、年間授業料53万5,800円です。この標準額をもとに計算すると、医学部6年間の学費は349万6,800円、約350万円になります。なお、大学によっては標準額と異なる金額を設定している場合があります。
※参照元:国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(e-Gov法令検索)
一方、私立医学部は、学費が比較的安い大学でも6年間で1,850万円前後かかります。国立との差は、安い大学でも約1,500万円、高い大学では4,000万円を超えます。
以下は、私立医学部31校の6年間の学費を安い順に並べたものです(2026年度)。寮費・教材費・同窓会費などは含みません。大学によって「6年間総額」の数え方(入学金や諸会費を含めるか)が異なるため、出願前に各大学の募集要項で確認してください。
| 順位 | 大学 | 6年間の学費 | 国立(約350万円)との差 |
|---|---|---|---|
| 1 | 国際医療福祉大学 | 1,850万円 | 約1,500万円 |
| 2 | 順天堂大学 | 2,080万円 | 約1,730万円 |
| 3 | 関西医科大学 | 2,100万円 | 約1,750万円 |
| 4 | 藤田医科大学 | 2,152万円 | 約1,802万円 |
| 5 | 日本医科大学 | 2,200万円 | 約1,850万円 |
| 6 | 東京慈恵会医科大学 | 2,250万円 | 約1,900万円 |
| 7 | 慶應義塾大学 | 2,272万円 | 約1,920万円 |
| 8 | 自治医科大学 | 2,300万円(貸与で実質免除の制度あり) | — |
| 9 | 東邦大学 | 2,580万円 | 約2,230万円 |
| 10 | 昭和医科大学 | 2,815万円 | 約2,460万円 |
| 11 | 大阪医科薬科大学 | 2,841万円 | 約2,490万円 |
| 12 | 東京医科大学 | 2,940万円 | 約2,590万円 |
| 13 | 産業医科大学 | 3,049万円(修学資金で実質負担減の制度あり) | — |
| 14 | 日本大学 | 3,338万円 | 約2,990万円 |
| 15 | 岩手医科大学 | 3,400万円 | 約3,050万円 |
| 16 | 愛知医科大学 | 3,420万円 | 約3,070万円 |
| 17 | 聖マリアンナ医科大学 | 3,482万円 | 約3,130万円 |
| 18 | 東海大学 | 3,551万円 | 約3,200万円 |
| 19 | 近畿大学 | 3,583万円 | 約3,230万円 |
| 20 | 久留米大学 | 3,638万円 | 約3,290万円 |
| 21 | 獨協医科大学 | 3,660万円 | 約3,310万円 |
| 22 | 杏林大学 | 3,700万円 | 約3,350万円 |
| 22 | 兵庫医科大学 | 3,700万円 | 約3,350万円 |
| 22 | 埼玉医科大学 | 3,700万円 | 約3,350万円 |
| 22 | 東北医科薬科大学 | 3,700万円 | 約3,350万円 |
| 26 | 福岡大学 | 3,775万円 | 約3,430万円 |
| 27 | 北里大学 | 3,895万円 | 約3,540万円 |
| 28 | 帝京大学 | 3,937万円 | 約3,590万円 |
| 29 | 金沢医科大学 | 4,044万円 | 約3,690万円 |
| 30 | 川崎医科大学 | 4,550万円 | 約4,200万円 |
| 31 | 東京女子医科大学 | 4,621万円 | 約4,270万円 |
31校の約半分(15校)は6年間で3,400万円以上です。2,000万円台前半で済むのは学費の安い上位8校ほどで、合格した大学によって1浪の損益分岐は大きく変わります。
この差額だけを見れば、「1年頑張って国公立に受かれば数千万円浮く」と考えるのは自然です。ただし、比べるべきなのは学費同士ではありません。「現役で私立に進む場合」と「1浪して国公立を目指す場合」の総コストとリスクです。
1浪にかかる費用は、予備校代だけではない
1浪のコストは、直接払うお金と、医師になるのが1年遅れることによる損失の2つに分かれます。
自宅から大手予備校に通うなら、直接の費用は100万〜200万円台に収まることもあります。医学部専門予備校に通って下宿もすると、直接の費用だけで300万〜600万円程度になる場合があります。
| 費用の種類 | 目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 大手予備校(医学部コース) | 年80万〜150万円 | 授業料と講習費を含む |
| 医学部専門予備校 | 年100万円台〜400万円程度 | 個別指導・手厚い管理型では500万円以上もある |
| 下宿する場合の生活費 | 年120万〜180万円 | 家賃・食費・交通費・光熱費で月10万〜15万円 |
| 受験費用 | 数十万円 | 私立医学部は1校6万円前後。交通費・宿泊費も別 |
| 医師キャリアの1年遅れ | 金額化しにくい | 初期研修・専門医取得・資産形成がすべて1年後ろにずれる |
他の予備校の調査では、大手予備校は授業料50万〜85万円に講習30万〜50万円、医学部専門予備校は年100万〜500万円、予備校の寮に入ると年200万〜300万円が目安とされています。受験料は、共通テスト1万8,000円、国公立二次1万7,000円、私立医学部は1校あたり約6万円です。合計すると、1年の浪人で200万〜1,000万円かかることがあります。
※予備校費用や生活費は通学形態・受講内容・地域によって異なります。上記は記事作成時点の目安です。
学費を下げる制度を知ってから判断する
現役私立を選ぶ前に、大学独自の特待生・奨学金制度と、公的な奨学金・ローンを確認してください。実質の負担が数百万円〜数千万円変わることがあります。
※人数・金額は年度で変わります。特待の多くは入試の成績上位者が対象のため、合格通知や大学の案内で対象かどうかを確認してください。
| 大学 | 制度 | 内容 |
|---|---|---|
| 国際医療福祉大学 | 特待奨学生 | 成績上位で入学金免除+年230万〜280万円給付(約50名) |
| 北里大学 | 特待生 | 6年間の学費を大幅免除 |
| 慶應義塾大学 | 給付奨学金 | 年200万円×4年(約10名) |
| 東北医科薬科大学 | 修学資金(A方式) | 3,000万円貸与、卒後に指定地域で10年勤務すると返還免除 |
| 東北医科薬科大学 | 修学資金(B方式) | 1,500万円貸与 |
| 兵庫医科大学 | 特待 | 一般選抜A上位合格者に学費減免 |
| 自治医科大学 | 修学資金 | 入学金・授業料等を貸与、卒後に出身都道府県で9年勤務すると返還免除 |
| 産業医科大学 | 修学資金 | 学生納入金の一部を貸与。卒業後、貸与を受けた期間の1.5倍の期間、返還免除対象となる産業医等の職務に就くと返還免除 |
なお、特待生制度や大学独自の修学資金には、成績基準や卒業後の勤務条件などが設けられている場合があります。支給額だけでなく、対象条件や返還の必要性まで確認したうえで、実際に利用できる制度を比較しましょう。
公的な奨学金・ローン
| 制度 | 上限 | 補足 |
|---|---|---|
| 日本学生支援機構(JASSO)第二種奨学金 | 月12万円+私立医学部は月4万円の増額可(月16万円) | 6年間で最大1,152万円。利息あり(在学中は無利息) |
| 国の教育ローン(日本政策金融公庫) | 原則350万円、医学部など修業年限5年以上の大学は450万円 | 返済期間は最長20年。世帯年収の上限あり |
| 都道府県の修学資金(地域枠など) | 月10万〜30万円程度 | 卒後に県内で9年程度働くと返還免除。詳しくは「医学部の地域枠とは?」 |
※参照元:日本学生支援機構 第二種奨学金の貸与月額、国の教育ローン(日本政策金融公庫)
期待値で考える:国公立に受かる確率が何%なら1浪が「得」か
判断の軸は、「国公立に受かる確率 × 学費差」が「1浪の実質コスト」を上回るかどうかです。
国公立合格の確率 × 学費差 > 1浪の実質コスト
1浪の実質コスト(直接費用+1年遅れる損失)を仮に800万円とすると、合格確率の損益分岐は次のとおりです。
| 合格している私立の学費 | 国立との差 | 損益分岐の合格確率 |
|---|---|---|
| 約2,200万円 | 約1,850万円 | 約43% |
| 約3,500万円 | 約3,150万円 | 約25% |
| 約4,000万円 | 約3,650万円 | 約22% |
数字の上では、合格確率が40%台あれば1浪も検討に入ります。それでも医進会では、国公立合格の見込みが60%以上、できれば70%以上ある場合に限って、1浪を前向きに検討することをすすめています。理由は2つです。
- 1浪して国公立に落ちても、翌年に同じ私立医学部に受かる保証はありません。今年の合格は、一度手放すと取り戻せない可能性があります。
- 浪人中の不安やプレッシャーは、計算に入らないコストとして成績に影響することがあります。
合格確率が50%前後のときが、最も判断が難しいケースです。合格した私立の学費、家庭の負担、本人の浪人への耐性で結論が変わります。
合格確率が30%以下の場合は、現役で合格している私立医学部への進学も有力な選択肢になります。特に、家庭の学費負担に無理がなく、本人が早く医師になることを希望している場合は、現役で進学するメリットも大きいでしょう。
なお、この計算は国公立に合格した場合の学費差をもとにした単純な試算です。国公立に不合格だった場合の進路や、翌年の私立医学部への再挑戦にかかる費用などは含んでいません。
現役で私立医学部に進むべき5つのケース
- 私立医学部に正規合格している:補欠の繰り上がりではなく正規合格なら、その価値は大きいといえます。
- 国公立がかなりのチャレンジだった:共通テストが目標点に大きく届かなかった、二次試験の記述に不安がある、判定がずっと厳しかった場合です。
- 浪人して成績が伸びる根拠が薄い:届かなかった原因と、それを1年でどう直すかを具体的に説明できない場合です。
- 家庭が私立の学費を現実的に払える:奨学金や教育ローンも含めて対応できる場合です。
- 本人が浪人に向いていない:模試の結果に左右されやすく、生活リズムを崩しやすい場合です。
1浪して国公立医学部を目指すべき5つのケース
- 国公立医学部にかなり近い位置にいる:大学にもよりますが、共通テストで85%前後を現実的に狙え、二次の英語・数学・理科でも戦える場合です。
- 不合格の原因がはっきりしている:社会や国語で想定外に落とした、数学の特定分野が弱かった、出願校の選び方を間違えたなど、改善点が明確な場合です。
- 私立の学費負担が家庭にとって重すぎる:6年間で2,000万〜4,000万円以上かかり、下宿なら生活費も加わる場合です。
- 本人に浪人への耐性がある:毎日淡々と勉強でき、模試で失敗しても立て直せる場合です。
- 来年の受験戦略が具体的に立っている:目標得点、伸ばす科目、私立併願の組み方、1年間の計画まで決まっている場合です。
2027年度の医学部定員は最新の方針を確認する
浪人を選ぶことは、翌年の入試環境にもう一度挑戦することでもあります。医学部の定員は年度ごとに国の方針が示されるため、過去の情報だけで判断せず、受験する年度の最新情報を確認することが大切です。
文部科学省が2026年6月に公表した資料では、2027年度の医学部総定員について、2025年度の総定員数である9,393人を上限とする方針が示されています。また、地域枠や研究医枠などの臨時定員の枠組みは、2027年度末まで1年間延長されることになりました。
今後の変更や大学ごとの募集人員については、最新の募集要項を確認しましょう。
※参照元:文部科学省「令和9年度医学部臨時定員に関する資料」
医学部合格者のうち、浪人生はどのくらいいるのか
文部科学省の調査では、医学部合格者に占める現役生は約3人に1人です。
平成30年度の医学部医学科入試における合格者13,409人のうち、18歳以下は4,898人(36.5%)、19歳は4,823人(36.0%)でした。19歳を1浪相当と考えると、現役相当と1浪相当の合格者数はほぼ同じです。
※文部科学省の資料は年齢別の集計であり、ここでは18歳以下を現役相当、19歳を1浪相当として整理しています。合格者数には複数大学への合格が含まれます。
※合格者数は延べ人数(複数校合格を含む)です。
現役生と1浪生がほぼ同数というデータは、「1浪は珍しくない」ことを示しています。一方で、2浪以上になると人数は急に減ります。浪人を選ぶなら「1年で決める」計画が前提です。
大学によって現役比率は大きく違います。たとえば慶應義塾大学は2024年度の合格者のうち現役生が75.7%と、現役が強い大学もあります。志望校の現役・浪人の比率は、大学の入試結果や予備校の分析で確認できます。
最終判断は5つの軸で決める
この5つは、本人だけでなく家族で話し合って決めてください。特に学費は、きれいごとではなく現実的に確認する必要があります。
| 判断の軸 | 確認すること |
|---|---|
| 合格した私立の学費 | 2,000万円前後の大学か、3,000万〜4,000万円台の大学か |
| 家庭の支払い能力 | 無理なく払えるか、ローンが必要か、きょうだいの教育費もあるか |
| 国公立までの距離 | 共通テスト85%前後を狙えるか、二次で戦えるか、模試の推移はどうか |
| 浪人で伸びる根拠 | 不合格の原因が明確か、1年で直せる内容か、自己管理できるか |
| 本人の気持ちと覚悟 | 合格を手放して浪人するプレッシャーに耐えられるか |
学費差だけで決めるのではなく、合格可能性、家庭の経済状況、本人の性格や気持ちまで含めて判断しましょう。
よくある質問
現役で私立医学部に進むのは「負け」ですか?
負けではありません。現役で私立医学部に受かっているということは、医師になる道がすでに開けているということです。医師になる時期を1年早く確定させる選択でもあります。
国公立医学部の学費は本当に6年で350万円ほどですか?
国立大学は国の標準額(入学金28万2,000円・授業料年53万5,800円)で約350万円です。公立大学は地域内・地域外で入学金が変わることがあります。
合格確率は何%あれば浪人していいですか?
金額の期待値だけなら40%台から検討に入りますが、合格を一度手放すリスクを考えると、60〜70%以上の見込みがあるときに前向きに検討するのが安全です。
2浪するとどうなりますか?
1浪の費用がもう1年分上乗せされ、医師になる時期もさらに遅れます。国公立医学部は現役か1浪以内で合格できれば費用対効果が高い一方、浪人が長引くほど受験準備だけで数百万円〜1,000万円近くかかることもあります。
私立医学部の学費を少しでも抑える方法はありますか?
特待生制度(成績上位で学費減免)、大学独自の修学資金(卒後の勤務で返還免除)、都道府県の地域枠修学資金、JASSOの奨学金(私立医学部は月16万円まで)、国の教育ローン(医学部は450万円まで)があります。
医学部合格者のうち、浪人生はどのくらいいますか?
文部科学省の調査(2018年度)では、合格者のうち現役は36.5%、1浪(19歳)が36.0%で、ほぼ同数です。2浪以上は大きく減ります。
動画で詳しく見る
この記事の内容は、医進会のYouTubeで塾長が詳しく話しています。
迷っている方は、無料オンライン相談へ
現役で私立医学部に進学するか、それとも1浪して国公立医学部を目指すか。この選択に、誰にでも当てはまる正解はありません。
現在の学力や志望校への合格可能性、家庭の経済状況、本人の浪人への適性など、さまざまな要素を踏まえて判断する必要があります。
医進会では、医学部受験に関する無料オンライン相談を実施しています。
- 現在の成績から、国公立医学部を目指せる可能性はあるのか
- 1浪することで、合格の可能性をどのくらい高められるのか
- 私立医学部と国公立医学部、どちらを目指すべきなのか
- 今後、どのような勉強計画を立てればよいのか
こうした悩みについて、現在の状況を伺いながら一緒に整理していきます。進路について迷っている方は、一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。
相談したからといって、入塾を決める必要はありません。まずは今後の受験方針を考える機会として、お気軽にご利用ください。








